久しぶりにテレビの前に、二時間釘付けになった。
筑紫哲也さんの追悼番組を見るためです。
改めて、その魅力ある生き方に惚れ込みました。
筑紫さんとは、僭越ながら勝手に遠からずの縁を感じていましたので、今回の出来事はとてもショックでした。
思えば News23に
名嘉睦稔の特集を組んでいただいたのが、マスコミ界に大きなインパクトで認識されるきっかけになり、それ以降は出演依頼も増えたのでした。あ、もちろんボクネンさんの話ですよ。あの時期の New23の影響力は相当なもので、ニュースのみならず、文化的な面まで幅広く取り上げていましたね。もちろん音楽界にも多大な影響力がありましたよ。
実は
TINGARAとしても大変お世話になっていて、贅沢にもメジャーデビューアルバムの
『さきよだ』のライナーノートを書いてくださったのでした。今、こうして筑紫さんが寄せてくださったテキストを打ち込んでいて、改めて感謝の気持ちでいっぱいです。
ここに紹介させていただきます。
南島の浜辺に寝転がって、降るような星空を眺めながら、このCDを聴いたら、どんなに気持ちがよいことだろう。
いや、そんな想像はあまりに単純で、型にはまりすぎているかもしれない。「降るような星空」という連想自体、「てぃんがーら」、つまり天の川そのものではないか。
南の島にそういうことをしに出かけるひまなど滅多にない、かわいそうな私のような気忙しい都会民にも、居ながらにしてそういう世界にトリップさせてくれる-それがこのCDの魅力であり、魔力なのだ。
沖縄の風土と文化は実にさまざまな音楽を生み出してきた。いまも生み続けている。
そういうなかで近年の特徴は、沖縄をバックグラウンドにしながらも、創り手のオリジナリティが全面にせり出して自分の世界を創り上げる人がでてきたことである。そこでは沖縄はいわば遠景に在り、いわゆる沖縄音楽ではもはやない。それを踏まえてはいるが、あくまでその人の個性が生んだ世界なのである。TINGARAのこの新しいCDがまさにそうである。
これを聴く人のなかには、エンヤを連想する人も多いのではないかと思うが、エンヤをアイルランド音楽、またはケルト音楽と思って聴く人はそういない。エンヤはエンヤであり、その音楽はケルト文化を基底にしているが、そこで展開しているのは彼女の世界である。
それと同じように、このCDで私たちが接するのは、オリジナルな「TINGARAの世界」である。
それにしても、それはなんと心地のよい世界であることか。
無理をしない、急かない、張り切らない。
悠久の大地の流れに身を寄せるかのように、のびやかに、邪心と雑念を取り払い、透明な時空をつむぎ出していく。
都会の喧騒や、そこで営まれる気忙しい生活とは対極の音楽空間である。
だからこそ、そういうなかに身を置く人たちに向かって、そんなに肩肘張らないで、ゆるやかにしなさいとささやきかけてくる。こわばった五体をもみほぐしくれるような音楽がここにはあふれている。
筑紫哲也
心よりご冥福をお祈りいたします。
イシジマ ヒデオ
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